「よぉ~しっ、飲むぞ飲むぞ!酒持ってこ~い!!」
バレットの掛け声で宴会は始まった。



久しぶりに泊まった大きな宿。それなら日頃のうらみつらみ(ストレスとも言う)を発散させようと急遽宴会が執り行われることになった。

「それでは、一番ユフィいっきいきま~す!」
お前は未成年だろう。と誰もが突っ込みを入れたくなるであろう、ユフィが見事な一気飲みを披露。
「プッハ~!うっめ~!」もはや親父と化しているユフィ。

「たまにはこんなのも良いかもね!それじゃ、私もウィスキー、ジョッキでいくわよ!!」
いつもは何かと暴走しがちな皆のブレーキ役のティファも日頃のストレスが爆発したのか、完璧なるいけいけねーちゃんと化している。

「かぁ~!しゃあねえな、こうなったら朝まで飲み明かすとすっか!!」
あんたはいつもの事だろう。やはりシドもご機嫌だ。いつものハイテンションをキープしつつ化け物じみたスピードで酒を消費している。恐るるなかれ樽を抱えて飲んでいるのだ。

「あぁ~何ぁんだか目が回ってきたよぉ~?」
ル○パン三世のようなイントネーションで話すナナキ。
「ナナキ、あなた少し飲みすぎじゃない?」
「そぉうかも。ティファが太って見えるよ・・・。」



      

       どぅぐゎああああああああああああああん!!!
          (効果音は強調して読んでね)




ティファのファイナルへブンをくらったナナキが早くも退場。KOだった。

「ああん!?ナナキの奴もう終わりか?だらしねぇ~なぁ!」
どんな基準でナナキをだらしないといっているのか知らないがバレットもシドと互角かそれ以上のスピードで酒の樽を空にしている。まはや人間業ではない。
ちなみにケットは本体のリーブがデスクワークで忙しいので今回は棄権。
ウ゛ィンセントは「私の罪・・・・・・・」だとか「ルクレツィア・・・」
とか意味不明なことを呟きつつ、壁に寄りかかってお汁粉ジュースをすすっている。だれからも突込みが来ないぐらい、はっきり言って怖い、暗い。しかしそのウ゛ィンセントをも凌駕する奴がいた。



「だから反対だったんだ・・・・・・。」
谷よりも深いため息を漏らすクラウド。

宿に頼んで急遽作ってもらった大量の料理。それに比例するかのごとく消費されていく酒。その費用を誰が出すのかといえば、チームのリーダー権、財布のがま口ことクラウドをおいて他にはいない。
「ったく、好き勝手に飲みやがって。だれが金出すと思ってるんだか・・・」
ここで自分も皆と一緒に暴走することも可能なのだが、その費用を自分が出すと思うと流石に飲む気にはなれない。
_なのでコップ一杯の酒をちびちび飲んでいた。これでは余計にストレスがたまる・・・とはいってもメンバーにあたるような事があれば、それはそれで問題だ。ここはグッとこらえよう・・・そう考えていた時、急に視界が真っ暗になった。
「!?」
「えへへ、だ~れだっ」

耳を突くのは愛しい声。

「エアリスだろ」
「正解~いっ」
こんな子供じみた真似を平気でやってくるエアリス。自分より年上のくせに仕草は純粋な少女そのもので、そんな彼女をクラウドは誰よりも好きだった。

「ね、クラウドはお酒飲まないの?」
「馬鹿か、あんたは、今飲んでるだろ?」
少し皮肉っぽく言ってグラスを傾ける。
「ひっど~い。そうじゃなくて、皆みたいにって事よ!」
頬をぷぅ~と膨らまして真剣に怒るエアリス。そんな仕草が愛らしくて、クラウドの口からは自然と笑みがこぼれ落ちる。
「まあ・・・な。そう言うあんたは飲まないのか?」
「私、お酒は少しにがてなの。ちょっと飲んだらすぐ赤くなっちゃう。」
そう言う彼女が手にしているのはジュースのようなフルーツワインのグラス。
それでもエアリスの頬はすでにピンクに染まっていた。白い肌に良く映えている。
「ねえ、クラウド」
「なんだ?」
「ちょっと外へ行かない?」
「外?」
「うん・・・だめかな?」
「別に構わないが・・・・・・」
「よかった!じゃあ行こう!」

浮かれ騒いでいるメンバーはこっそり出て行く二人に気が付かなかった。



「少し寒いね、クラウド」
「そうか?」
「うん。ねえ、もうちょっと向こうまで行ってみよっか」
そう言うとエアリスは町外れの森に向かってずんずん歩いていく。少し歩けばそこには不気味とも思えるほど静かな場所がある。そこはまるで俗世間から離れやたような別世界。先程までのドンチャン騒ぎの名残はもう無い。

「クラウド見て」
そう言ってエアリスは星空を指さす。俺は何の事かさっぱり分からず、肩をすくめた。
「きれい・・・ね。」
「興味ないね」
「どうして?」
「どうしてって、星なんて全部一緒だからさ。」
「そうかな・・・・・・でも星は生きているんだよ?」
「それは知っている。」
「こうしている間にも星は人間の作った傷を癒して新たな生命を誕生させて、私たちだけじゃない。草も花も木も、動物たちも生きている。そんな星がそらを見上げればこんなにたくさん、数えきれないぐらいたくさんあるんだよ?それって凄く素敵なことじゃないかな・・・?」


何でも無い当然のことを、ありのままで受け入れ素直に喜べる。簡単そうで難しいこと。それができるのは、エアリスの内面が鮮麗されているから。
美しい外見もさることながら、エアリスの内面の美しさはクラウドを引き付けて止まない。
「あんたは何でも素直に喜べるんだな」
「?」
言葉の意味がいまいち理解できないのか、エアリスが不思議そうな顔をする。
「それって、褒めてるの?」
「ああ」
「そっか、えへへへへへ」
「なにが可笑しい」
笑われたのが気に食わなくってクラウドはぶすっと言った。
「可笑しいんじゃなくて、ね。うんうん。うれしいな☆」
「はぁ?」
「だってクラウドいっつもバカッとしか言ってくれないんだもん。褒めてくれての久しぶり。」
「・・・そうか?俺としては毎日古代種様を崇め奉っているつもりだがな・・」
「どおいう意味よっ」
「毎日毎日おてんば娘にこき扱われているってことさ。」
「そんなことしてないもん!」
「よく言えるな・・・。この前自分のマジックポイントがもったいないからって、俺を・・・・・・・」
「ららら~♪」
「ごまかすな。それにまだあるぞ、あれは確か全員の装備を整えて金が無かったときの事だ。あんたはなんとか名案があるとか何とか言ってモンスターのころにーの真ん中に俺を・・・・・っておい!」


逃げ出すエアリス。それを追いかけるクラウド。
二人っきりでたわいも無いことを話す。恋人同士の当然とも言える光景。しかし旅の途中の彼らが二人になれることは少ない。というか無いに等しい。こんな風に、普通の恋人同士に戻って、無邪気に話したりじゃれたりする事がどれだけ二人にとって嬉しい事か、言わなくても分かるだろう。


やがてクラウドがエアリスの手首を掴んで捉まえる。腕の中に彼女の柔らかい体を抱きこむと、もつれ込むようにエアリスをふかふかの草のシーツの上に押し倒す。そうやってお互いを見つめ合って、微笑みあって、口付けをする。
深く激しく・・・クラウドはエアリスの舌を貪る。
「ん・・・」


少しだけ、甘い酒の味がした・・・・・・・。













その後は・・・・・・


まあそうなった訳で・・・・・・・



















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」

言葉が出ない。はっきり言って見たくも無い。ちょっとだけ・・・三時間程席をはずした間に宿は惨状と化していた。


           ぐぅああぁあああああああん

  
                『!?』

ウータイにつらしてある鐘を打ったんではないかと思うぐらい壮大(?)な音にビックリして振り返れば、親父二人が大の字で床に寝ている。

「すごい・・・」
なぜか感心しだすエアリス。

「むにゃむにゃむにゃ・・・骨ジャーキー。。。」
おいナナキ、お前は犬か、いや本当に犬なんだけれど。この前ゴミ箱(!?)に捨ててあった骨付きジャーキーがよほど美味しかったのか(!!?)。たかが骨付きジャーキーのせいで、人間より高度な知能を持つといわれる種族の末裔がこれ程までに堕ちるとは・・・。今は亡きセトやそのご先祖様が見たらさぞ悲しむことだろう。・・・・・・まあいい。
さて他の奴らは・・・
見渡して真っ先に目に付いたのは床をゴキブリのように(!?)這いずり回るウ゛ィンセント。どうやら奴らが散らかしたビンやら何やらを回収しているらしい。そして俺たちのほうをチラリと見ると一言ぼそりと呟いた。
「上手く逃げたな・・・。」
その一言がこの場所で起きた惨事の全てを物語っていた。

ごめんよウ゛ィンセント。あんたは偉い。










「うわっ!!?」
「クラウド!?」
急に何かに躓いてクラウドはこけそうになった。いや何者かの攻撃によって倒れそうになったのだ。

・・・・・・・ユフィだ。

「クラウドぉ~、今度こそマテリアは私のもんだぁ~~~~!!」
寝ぼけているのかマジなのか、先程に続き見事な足払いを仕掛けてくるユフィ。
それを軽くジャンプして避けるクラウド。

おのれ ユフィ。寝ぼけてもなお俺にたてつくとは・・・!

続いて体を少し左にひねり、飛んできた手裏剣をかわすクラウド。さすがはセフィロスコピーだ(?)




「-----------なに!?」

今度は背後から身の毛もよだつような殺気を感じたクラウド。


          _この殺気はティファかっ!!_


体が反射的に戦闘モードへ切り替わる。

「エアリス!外へ逃げろ!!この場にいたら命が危ない・・・!」
クラウドの言葉は大げさでも何でもない。マジでこの場にいたら命が危ない。

「う・・うう・うん。分かったわ!クラウド気おつけて・・・。」
「ウ゛ィンセント、エアリスを頼む・・・!」
「・・・エアリスの安全だけは保障しよう。・・・戦ってこい・・・。」
「クラウドっ!クラウドっ!」

勝率0%の勝負に全てを捨てて挑む男を見送るかのようなセリフだが、これはただたんに鞠毬 りくの映画の見すぎである。ちなみにスターウォーズが好き。


「よし、これでエアリスは安全だ。俺に思い残すことはもう無い!さあこい、ティファ・・・!!」



               ジャジャーン
        (BGMです。やはり強調してお読み下さい)



「っああああああああああああああ!!!」
開始そうそう強烈な左アッパーを繰り出すティファ。


            
            ぐわしゃあぁぁ!!!
          (ごたごた言わずに強調して読む)


クラウドがそれを避けたため、ティファの拳が近くにあった椅子を粉砕する!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・!!!」
「ティファ、物まで壊したら俺の出費がっ・・・!」
くそうくそうくそうくそうくそうくそうくそうくそうくそうくそう!!!!!
さっきまでの甘い雰囲気はどこへいったんだ!?(コルネオが耐え切れなくなりました)待ってろよエアリス。この戦いが終わったら二人っきりで二次会やろうな・・・!!
しかしそんな事を考えている余裕は無さそうだ。少しトリップしていたクラウドにティファが再び襲いかかる!
壊れた椅子に片足を掛けるティファ。走る勢いを利用して強烈な回転蹴りを仕掛けてくる!
「ちっ、ムーンサルトか!!」
トリップしていた分、反応が遅れたクラウド。すぐさま後ろへ大きくジャンプするが、完璧には避けることができずティファのつま先が頬をかすめる!


            ずがしゃああああああ!!


なぜか吹っ飛ぶクラウド。

「く・・・、ティファのやつ酔っているせいかパワーが格段に違う!!スピードもいつも以上だ!・・・・・うかつには近寄れない、どうすれば!!・・はっ!?」

クラウドが首を横に傾けた。
               ―刹那―


              びゅわぁん!!

クラウドが首をかしげてできた空間を、スーパーボールがもの凄い勢いで通り抜けていく・・・!そしてそれは壁に直撃し見るも無惨な大穴を開ける!

なんにせよティファとユフィに挟まれる形となったクラウド。
まはや絶対絶命か・・・・・・!!!




             ―  そして  ―


「クラウド、私の(ちょっと背伸び)パンツみたんでしょ!!」
そう言ってティファがカイザーナックルを着けた右手で拳を作り、突っ込んでくる!!
「なに!?まだ覚えていたのか、テイファ!?」
ティファが今回人並みはずれて強いのは、そのせいもあるのか・・・なるほど・・・なんて悠長に感心している暇は無い。なんとかして家具を壊さずにあれを避けなければ!
しかし―!!
「マテリア奪った後はとんずらさ~~あ~~~!!!」
なんとユフィまで獲物をひっさげ突っ込んできた!!
「げぇ!お前ら挟みうちとは卑怯だぞ・・・!?」
クラウドの抗議の声も完全にイっちゃってる二人の耳に届くはずはない。
ティファは顔面コークスクリューパンチの構えをとっている。
ユフィは今にもスーパーボールを投げつけてきそうだ。

No.293 鞠毬りくさま







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